しし座流星群 /2001


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2001しし座流星群(600×544 121Kb)


撮影データ
2001.11.19 03:17〜03:35 /3pic comp.  total17min
全天カメラ Mr.Kawano製 (MC-ZENITAR 16mm F2.8開放 +MAMIYA Roll Film AD67)
GOTO Mark-X恒星時追尾 Kodak E200(+3増感) /長野県佐久町



2001年11月19日未明、しし座流星群が大出現しました。最も多い時で1時間換算数千個、流星雨というより「流星嵐

といっても過言ではないと思います。英国のデビッド・アッシャ博士によりその出現が予報されていた今回、私は期待が大

きくなる反面、例年とさほど変わらない数に終わるのでは・・との気持ちが交錯する中で1ヶ月ほど前からカメラ他の準備を

進め、11月18日を迎えました。以下、当日の日記です。

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「いよいよ数時間前となったが、弱い冬型の天候で長野県北部は曇天、天候の回復は明朝午前になりそうとの天気

予報を聞き、地元での観望を断念、星を観る会の皆さんと1998年に行った長野県中部まで遠征することにした。高

速道を南下、上田菅平I・Cを通過すると、それまで空を覆っていた雲が無くなりオリオン座が綺麗に見え始めた。しかし南方

向には低い雲が流れているのが気になる・・・30分後佐久I・Cで降り待ち合わせ、菅平は晴れていたが、ここはやはり曇っ

ている。しかし予定どおり国道を南下し臼田を越え佐久町へ

休憩したコンビニで仲間の人たちが光害の無い良い場所があるとの情報を店員さんから聞き、そこへ向かうことにする。ここ

は何とか晴れている。妻からメールが届いた。自宅は今雨とのこと、電話をすると向こうから残念そうな声が聞こえる。強い

冬型の気圧配置では無かったので、長野県全域で天気は何とかなると思っていたのは誤算だった。もし、流星雨になっても

妻は観ることが出来ない・・何とか連れてくればよかったと、とても後悔した。

コンビニを出て山中へ向かう。雲は全くなくなり、車中から澄み渡った漆黒の空に冬の星座が見える。30分ほどで目的地の

峠に到着。 機材を出し1時間程で撮影準備を終えた午前0時半、あれほど晴れていた空にいつの間にか雲が広がり、ほ

とんど星が見えない状況となってしまった。北極星も見えず、赤道儀の極軸も合わせられない・・今さら移動する時間は残さ

れていない・・皆腹を据えてここで待つことにした。時折雲間から1等星だけが見える・・ そして雲を切り裂くように火球が飛

んでいく・・・このまま見えずに終わるのだろうか・・・・しかたない・・・

例年とは全く出現数が違うのは雲間の火球の数をみてもはっきりわかる。妻はどうしているだろうか、向こうはまだ雨が降

っているのだろうか、妻だけでも観て欲しい
電話をするが圏外で繋がらない。他の人の携帯電話を借りてみたがやはりだ

めだ。メールも無理。

午前2時少し前、あれほど空を覆っていた厚い雲が少しずつ去り、空には星が見え始め、全天のあちこちに鋭い流星が流

れている、観たこともない程の数、やがて薄曇りも晴れ星空が還ってきた。夢中でシャッタを切ってはフィルムを送って行く、

会員の子供達が流星の数を数え始める、「1、2、3・・」駆け足のような早さで唱えていく、僅かの時間で500を越える

1回目の極大の2時半を過ぎた。なんとか妻に伝えた、生涯に一度かもしれないこの光景を観て欲しい・・・露出時間の

合間に話をするが相変わらず繋がらない・・歯がゆい。

3分から5分ずつ露出してはフィルムを送る、全天カメラのフィルムを交換、その間にも止めどなく星が流れ続ける、もう極

大がいつなんのかは全くわからない。火球も沢山飛んでいて流星痕を残すものも珍しくない。

2回目の極大(3時20分)が過ぎ、その後も流星が止む気配は全くない。明け方が近づいて一段と気温が下がってきた。

温度計がマイナス5.5度を指している。レンズには全て曇り止めヒータを巻いておいたが、口径の大きいペンタ67とマミ

ヤM645のレンズは中心部が曇っている。35mm判用と全天カメラは大丈夫だ。やがて空が白み始めた。5時になっても

流れ続けている。アッシャ氏の予報は見事
という他はない。

午前6時、長い夜が明け機材を撤収した。暗闇では判らなかったがすぐ近くにお地蔵さんが安置されていることに気づいた。

手を合わせ、流星雨に逢えたことに感謝した。そして帰路に就く。昨晩立ち寄った麓のコンビニまで降りると携帯電話が使

えるようになり、妻が午前3時過ぎに送ったメールが入り、「庭先で2時半から3時ころまで晴れて、流星が見えた。凄い数

だった」とあり、徹夜の疲れがふっと抜けるさわやかな気持ちになった。沢山の流星が見えたことはもちろん嬉しいけど、自

宅にいた妻も運良く観ることが出来たのはそれ以上に嬉しい出来事だった。


この壮大な瞬間に出逢えたことを心から大自然に感謝致します。



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撮影に使った全天カメラについて(補足)

全天カメラ

今回撮影に使った全天カメラとは、文字どおり天空すべてを撮影するためのカメラで、福岡の川野様が、しし座流星群に間に合う

ように製作して下さったものです。35mmカメラ用のレンズを中判のフィルムホルダ(マミヤプレス67)に取り付けて使う形式のも

ので、自作される天文ファンもいるようです。

このカメラにフードを外した魚眼レンズをつけると、レンズの水平面から天頂まで、かつ360度方向すべてをフィルム上に約45

φのイメージサークルとして写し込むことが出来、銀河や流星の撮影に威力を発揮します。流星撮影では少しでも暗いものを写す

必要から魚眼レンズを絞り開放で使うので、周辺像はお世辞にも良いとは言えませんが、(それはレンズの特性であって、欠点

ではありません)どこに飛ぶか判らない流星を撮影するには最も適したカメラと言えると思います。流星撮影において1台のカメラ

が全天を常時睨んでいてくれるという利便性は他の機材の追従を許しません。 なおこのカメラは星空撮影用として特化されてい

るため、シャッタはありません。引き蓋と呼ばれる遮光板を使うかまたはレンズの先に筒を被せてシャッタ替わりとします。

今回のしし座群では当初私が考えていた以上に活躍してくれました。低廉な価格で高性能のカメラを短時間で製作して下さった

川野様に御礼を申し上げます。