火星 再び接近 2005年 晩秋


二年ぶりに接近を迎えた火星です。2003年の大接近よりやや遠距離ですが、それでも通常は表面の模様が観測困難なこの惑星の観測には好機であることは言うまでもありません。晩秋の空、ひときわ赤く輝く火星、かつて20年近く前にも同じような時期に接近し、当時住んでいたアパートのベランダから小さな望遠鏡で観た僅かな模様を今でも思い出します。望遠鏡をお持ちの方は観望してみては如何でしょうか? たとえ小さな望遠鏡でも、たとえ僅かしか模様が見えなくても、「自分で見た」という事実は惑星探査機やハッブル望遠鏡の鮮明な画像にはない感動があると思います。

久しぶりに引っ張り出した望遠鏡でしたが、時々暴走していた制御部の動作エラーも無く動いてくれました。この写真はシュミットカセグレンというタイプの望遠鏡に通常のディジタルカメラを搭載して撮影した後、数コマ重ね合わせ、コントラスト調整などにより模様をより鮮明にする処理を施したものです。(それでもこの程度なのは、大気の揺れのによる影響が大)
画面から2メートル程離れて見て頂くと、大気の状態が安定している時に小さな望遠鏡で観た今現在の火星のイメージに近いと思います

ディジタルカメラの変遷について
2年前の大接近の時は、古い80万画素(7年前購入)のものを手でシャッタを押しながら撮影するという危なっかしいものでしたが、今回はその後入手したカメラによるものです。こちらはリモコンも使え操作性も格段に良いものなのですが、なぜか・・ 火星の写りが良くありません。理由は、主にレンズの違いによるものでした。80万画素のものは固定焦点でしたが絞りがF2.5と大変明るく、またノイズも少なめでコントラストが高いものでした。これが幸いして、高倍率で暗くコントラストの低くなった火星像を鮮明に捉えてくれました。しかし今回使用したものは、ズーム付きで500万画素、機能色々、要するに通常の撮影にはなんら申し分ないのですが、こと望遠鏡による高倍率惑星撮影においてはレンズがやや暗く、低速シャッタを余儀なくされ、結果プレビューでは鮮明な画像が見え隠れしているにも関わらず、保存される画像は大気の揺らぎを拾ってしまいボケているという状態になりがちです。私の持っているカメラに関する限りでは7年前のものの方が惑星撮影に向いていると思います。当時まだディジタルカメラは一部の人が使い始めた時代、CCDも現代のものより数段画素が粗いものでしたが、それを補うかのように優秀なレンズが付いていることを改めて発見すると、開発した技術者の心意気が伝わってくる気がします。
惑星撮影は明るさ(口径、焦点距離、感度)との戦い、この図式は当然ながら銀塩からディジタルになっても変らないことを改めて感じました。


2005.11.05 21h20m
Meade LX200-25 F6.3、 Kasai ×2BL、UW6.7mm
Canon Power ShotS60 F4.5 1sec ISO100
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